自宅サロン開業、必須だったのは2万円──設備をいきなり揃えない始め方
2026/6/15 / 更新:2026/8/1
この記事で分かること
読了時間:約 6 分
- ✓ 開業に絶対必要だったのは約2万円。施術ベッドはメルカリの1万円で足りた
- ✓ 設備はいきなり揃えない。何が必要かは、開業したあとに患者さんが教えてくれる
- ✓ 徐々に足すスモールスタートなら、手元のお金が守られて、不安な時期を耐えられる
結論から。必須だったのは、約2万円です
私が自宅サロンの開業に使ったお金は、全部で約77万円でした。
ただ、開業して4年たったいま、はっきり言えることがあります。このうち、開業に本当に必須だったのは約2万円だけでした。残りの75万円は「あると良いもの」で、あとから少しずつ揃えても、何も困らなかったはずです。
この記事では、その内訳を実際の数字で公開したうえで、「設備をいきなり揃えない」という始め方について書きます。私は理学療法士として15年間、病院などで勤務したのち、自宅の一室(11畳)でリハビリ系の自費サロンを開きました。ここに書くのは、その実体験の数字です。
2万円の中身:施術ベッドとタオルがあれば、始まる
| 区分 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 必須 | 施術ベッド(メルカリで1万円)・タオル・枕各種・胸当て枕・キャスター付き椅子 | 約2万円 |
| あると良い | 施術備品(人体模型・ストレッチポール・ヨガマット・バランスボール・チューブ・テーピング・出張用折りたたみベッド 等) | 約5万円 |
| あると良い | 壁紙リフォーム・インテリア | 約30万円 |
| あると良い | プリンター・iPad(カルテ・写真動画)・決済端末(Square) | 約40万円 |
| 合計 | 約77万円 |
施術ベッドは、メルカリで買った1万円のものです。4年使っていますが、まったく問題ありません。極端に言えば、ベッドとタオルさえあれば、セラピストの開業は始まります。
「2万円で開業できた」と言いたいのではありません。私自身、最初に77万円使っています。言いたいのは、その経験を通ってきたからこそ分かった、「必須」と「あると良い」の境目がどこにあるかです。
設備は、いきなり揃えない
開業前は、設備を揃えたくなります。ちゃんとした店に見せたい。患者さんに失礼がないようにしたい。私もそうでした。人体模型もストレッチポールも、開業前に買いました。
でも、開業して分かったことがあります。
何が必要かは、患者さんが教えてくれます。実際に来てくださる方の症状・年齢・目的が見えてから、「この方のためにチューブがいる」「ポールを使う運動を出したい」と分かる。そして、必要になった日に注文すれば、翌日には届きます。先に買っておく理由は、実はどこにもありませんでした。
先に揃えたくなる本当の理由は、自分の不安です。そして、設備をいくら揃えても、その不安は消えませんでした。不安を消してくれたのは、手元に残っているお金の方でした。
開業当初は、売上が安定しません。私も、貯金が減っていく時期は正直に言って不安でした。あのとき設備に使った10万円は、いちばん苦しい時期の1ヶ月分の生活費に相当します。設備はあとから買えますが、減った貯金と削られた心の余裕は、すぐには戻りません。
もう一度開業するなら、この順番で足します
私がもう一度ゼロから開業するなら、こう進めます。
- 開業時:施術ベッド・タオル・枕で約2万円。ここだけで開業する
- 患者さんが付き始めたら:実際に使う場面が見えた備品だけを買い足す(私の場合で計5万円ほど)
- リピートが安定したら:空間に投資する。壁紙・カーペットの清潔感は「また来たい」に直結するので、ここはケチらない価値がありました
- 事務が回らなくなってきたら:カルテ・決済まわり(iPad・決済端末)。毎日使うものなので、ここもストレスなく回る環境にする価値があります
順番のポイントは、お金を使う判断を「開業前の想像」でなく「開業後の事実」でやることです。想像で買うと外れますが、目の前の患者さんに合わせて買うと外れません。
自宅サロンだから「かからなかった」費用
スモールスタートを支えたもう一つの柱が、自宅という選択です。テナント開業なら必ずかかる費用が、自宅サロンではゼロでした。
- 物件取得費(保証金・敷金・礼金・仲介手数料)→ 0円
- 毎月の家賃 → 0円
- 通勤の交通費・時間 → 0円
テナントを借りると、物件取得だけで家賃の半年〜1年分(数十万〜100万円超)が最初に飛び、毎月の家賃が固定費としてのしかかります。初期費用を2万円まで絞っても、家賃契約を結んだ瞬間にスモールスタートは崩れます。固定費が軽いと、売上がまだ少ない開業初期でも生き延びられる。これは数字以上に、精神的な余裕に直結しました。
持続化補助金で50万円。使わない手はない
大きな買い物をあとに回すと、もう一ついいことがあります。補助金を使える段階まで、支出を取っておけることです。
私は開業初期に商工会へ入会し、担当の方にアドバイスをもらいながら事業計画書を作成して、経費の3分の2・上限50万円の持続化補助金を受けられました(私の頃の採択率は約62.9%)。この50万円は、電飾付きの看板と新聞折込チラシ代に充てました。申請までの具体的な流れは、持続化補助金の活用記事に分けて書きました。
⚠️ ひとつ注意。補助金がらみの営業電話には気をつけてください(「申請を代行します」系のもの)。怪しい番号は電話帳ナビなどで確認できます。
毎月かかるお金(ランニングコスト)
初期費用だけでなく、続けるためのお金も正直に書きます。
- 光熱費・消耗品・サーバー代・会計ソフト など:約1万円/月
- 広告・集客費:約10〜15万円/月(新聞折込チラシ、ホットペッパー など)
自宅なので家賃・人件費・仕入れがない分、固定費の中心は広告費です。逆に言えば、集客の費用対効果を上げることが、自宅サロン経営の生命線になります(私の経費率はおおよそ40%でした)。最初の患者さんをどう集めたかは、集客のリアルに、「いくら売れたか」より「いくら残るか」の考え方は、一人開業のお金のリアルに書いています。
いちばん大事な話:残したお金が、防衛資金になる
設備に使わなかったお金は、消えるわけではありません。そのまま生活防衛資金になります。
開業当初の売上が安定しない時期を耐えるために、生活防衛資金は最低でも1年分の準備を強くおすすめします。初期費用を2万円まで絞る本当の意味は、節約ではなく、この防衛資金を厚くすることにあります。お金の余裕は、そのまま心の余裕になります。
もし今その資金がなくても大丈夫です。アルバイトをしながら少しずつ貯めて、準備が整ってから踏み出す、というやり方も十分にあり。焦らないことが、長く続けるためのいちばんのコツでした。
今日できる一歩:「必須」の列を、2万円まで削ってみる
紙でもスマホのメモでもいいので、自分の開業に必要だと思っているものを全部書き出して、「必須」と「あると良い」の2列に分けてみてください。そして「必須」の列を、疑いながらもう一度見てください。それは本当に、初日に要るものでしょうか。患者さんが来てから買っても、間に合わないものでしょうか。
削り終えたとき、「本当に最初に必要な金額」が想像よりずっと小さいことに気づくはずです。それが分かるだけで、開業は一気に現実的な計画に変わります。
まとめ
- 開業に必須だったのは約2万円。施術ベッドとタオルがあれば始まる
- 設備はいきなり揃えない。何が必要かは、開業後に患者さんが教えてくれる
- 足す順番は「開業前の想像」でなく「開業後の事実」で決める
- 残したお金は生活防衛資金になる。それが不安な時期を耐える力になる
数字も中身も、あなたの計画に当てはめて考えてみてください。「自分の場合はどうだろう」と相談したくなったら——
私が実際に通ってきた道を、リアルな数字ごとお話しします。
よくある質問
Q. テナントや賃貸住宅でも、同じように2万円で始められますか?
A. テナントは物件取得費(保証金・敷金・礼金)と毎月の家賃が乗るので、この記事の2万円はそのまま当てはまりません。家賃の半年〜1年分の初期費用を前提に計画してください。賃貸住宅は、契約で事業利用が制限されている場合が多いので、始める前に管理会社や大家さんへの確認が必要です。
Q. 中古の施術ベッドで、衛生面や強度は大丈夫ですか?
A. 私はメルカリで買った1万円のベッドを4年使っていますが、支障はありません。ただし購入時に可動部のガタつきと耐荷重は確認してください。タオルやフェイスカバーは新品を使い、施術ごとに消毒する——この衛生管理は、ベッドが新品か中古かに関係なく必要です。
Q. 開業資金は、融資や借入で用意した方がいいですか?
A. 私は借入をせず、自己資金の範囲で始めました。自宅サロンは初期費用を小さくできるので、借入の必然性が低いスタイルです。それよりも生活防衛資金1年分の確保を優先することをおすすめします。融資の判断は状況によるので、検討するなら商工会や日本政策金融公庫の窓口に相談してみてください。